桜のしおり
二次小説とか初めて書いた。
作品:幻想水滸伝Ⅴ
時期:ソルファレナ攻略戦後 対サイアリーズ戦〜対アレニア・ザハーク戦間
登場:ギゼル、マルスカール
サイアちゃんの訃報は聞いた後で、脱走するマルスカールを見送るギゼルさん。な妄想の産物。
てか、主に、ギゼルの内心が書きたかっただけ。
読む人は下からどーぞ。
黄昏の願い
「ギゼル……。」
「早く行って下さい、父さん。」
以前、ゴドウィン家の手から逃れるべく、王子達が使った脱走路。そこにとめられていた真新しい小舟には、すでに幾人かのゴドウィン家の付き人達が乗りこんでいた。
王子率いる反乱軍は、すでにソルファレナに到着し、市街へ入っていた。その勢いをとめるものは何も無く、太陽の紋章を封じられたいま、彼らになす術はなかった。
「私は陛下と共に、ここに残ります。」
王子の勝利はほぼ確定している。それでも、彼らは降伏することなど出来なかった。
「……お前だけでも、逃げる気は無いのか。」
「陛下をお守りせねば、なりませんから。」
ギゼルは薄く笑った。それが理由でないことなど、マルスカールも分かっていた。だが、何も言わず目を伏せた。マルスカールと同じように、ギゼルもまた、覚悟を決めていた。ならば、今更言うことなどありはしなかった。
「行って下さい。大丈夫、すぐに会えますよ。」
「うむ。……達者でな。」
マルスカールは付き人達の待つ、小舟へと乗り込んだ。マルスカールがちゃんと舟に乗ったことを確認すると、付き人達はゆっくりと舟を漕ぎはじめた。
「母さんに会えないのが、少し残念ですね。」
離れゆく父にギゼルは、独り言のように呟いた。マルスカールはギゼルの方を向かぬまま小さく頷く。
マルスカールを乗せた舟はゆっくりと、だか着実にソルファレナを離れていく。ギゼルは小さくなるその影をじっと見つめていた。
おそらくは、もうソルファレナの見納めになる。長い戦いも終わり、彼女の望んだ元老に支配されないファレナになるだろう。幼い、だが聡明な女王とその兄の名の元、平和を謳歌するファレナが。
ギゼルにはあと一仕事が残されていた。
「願わくば……、貴女のいない地獄へ……。」
ギゼルは静かにその場を後にした。
あとがき
個人的には、ギゼルはサイアちゃんのこと多分、めっちゃ好きで、「私は貴女が来てくれただけで嬉しい」だの「貴女が無事なら良い」だの言うのは、あえて本心を言うことで、嘘言ってるっぽく見せたかったんじゃないかと推測してるわけですな。
最終的には、ゴドウィンの望みを叶えるのは無理とふんで、せめてサイアちゃんの願いだけでも叶えさせたかったんじゃないかな。多分、殿下と対峙したときには、もう悪役になるつもりだったんじゃなかろうか、と思うのです。
マルスカールは、本当な息子だけでも生かしたかったけど、本人の強い希望であえなく断念だと、まだ救いがあるし。そんなに薄情な人ではないと思う。
ともかく、あのへんのイベントは悲しすぎる。
ちなみに最後のセリフは、サイアちゃんが地獄に落ちるやろなーみたいなこと言ってたのを受けて、地獄にいなかったらいいな、ってこと。